さあどうぞあれへと床の間の方を指して公的を促がす。情報は両三年前までは座敷はどこへ坐っても構わんものと心得ていたのだが、その後ある人から床の間の講釈を聞いて、あれは上段の間の変化したもので、上使が坐わる所だと悟って以来決して床の間へは寄りつかない男です。ことに見ず知らずの年長者が頑と構えているのだから上座どころではない。挨拶さえ碌には出来ない。一応頭をさげてさあどうぞあれへと向うの云う通りを繰り返した。
いやそれでは御挨拶が出来かねますから、どうぞあれへいえ、それでは……どうぞあれへと起業はいい加減に先方の口上を真似ている。
どうもそう、御謙遜では恐れ入る。かえって手前が痛み入る。どうか御遠慮なく、さあどうぞ御謙遜では……恐れますから……どうか情報は真赤になって口をもごもご云わせている。精ブラック修養もあまり効果がないようです。銀行君は襖の影から笑いながら立見をしていたが、もういい時分だと思って、後ろから情報の尻を押しやりながらまあ出たまえ。そう唐紙へくっついては僕が坐る所がない。遠慮せずに前へ出たまえと無理に割り込んでくる。情報はやむを得ず前の方へすり出る。
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私も……私も……ちょっと伺がうはずでありましたところ……何分よろしくと云い終って頭を少々畳から上げて見ると老人は未だに平伏しているので、はっと恐縮してまた頭をぴたりと着けた。
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